■D-45

これは大変な仕事でした。思い出すのも嫌なぐらいです。仕事を受ける前から分かっていたのですが掛けた手間から考えると収入は最低です。その代り時間はたっぷり、都合1年あまりいただきました。

ネックが1mm強ずれています。トップ落ちもあり弦高は非常に高いです。

ネックがボディ後方にめり込んでいるのがよくわかります。何でこうなったのか?しかし、この事例は初めてではなく何度か経験があります。多いのは片側だけ斜めにずれているのが多いのですがね。

ネックを外します。トップ板が両側割れて1mm強ボディ後方にスライドしていますね。割れたトップ板とネックが一緒にずれたということですね。

割れたトップ板を剥がしました。細かく割れて剥がれたロゼッタ、バインディング等をなくさないように保管します。あとでパズルのように組み込むのです。このD-45のネックブロックはL型のようです。マーチンなのに珍しい。ネックブロックとインフォースバーの間の補強板はL型の場合いらないのでは?無くしてL型の上部全面でトップ板を接着するのがL型ネックブロックの王道だと思うのですが・・・トラスロッドを入れるようになったマーチンの伝統との折り合いなのでしょうか?

ずれを修正して接着です。

ロゼッタ、ネックエンドパーフリング、バインディングをパズルのように入れました。地獄です。

ずれが治っていますね。

怪しいところに補強を入れています。

ネックを戻しています。角度も治してあります。

弦を張って確認、ネック真っ直ぐ、6フレットで2.5mm、サドル少し上げてもいいぐらいです。
この後の画像は失念したのですが、塗装を完璧に治して2か月ぐらい様子を見てから納品しました。2018年の2月ぐらいだったかと・・・

そうして、尋常じゃない暑さの夏を過ぎたころ・・・なんとまたズレたと・・・40度を超える室内で弦を張りっぱなしにしたのでは?(しかも場所は九州)渡す前に夏は十分注意してくださいと言ってあるのだが。
ただでさえ破格で前回修理したのに今度はいくら請求できるのか?完璧な修理の自負があるので断っても問題ないのだが・・・かわいそうなのでとりあえず1年ぐらいの時間をもらい引き受けた。
腹が立っていたので(地獄の赤字なので・・・)ほとんど画像は失念です。
ギターの保管が悪いようなので、禁断の熱に負けることが無いエポキシを使用しました。
前回と同じことの繰り返しですが、今回はダボをさらに4か所入れました。これでずれることは無いでしょう。・・・ダボにエポキシ・・・本当はD-45クラスのギターにやりたくなかったです・・・。

ネックを戻して、塗装を完璧に治して終了。前回ここをこうした方が良かったかな?というところを全部やり直したわけなので出来はかなり良いです。2019年5月です。